属人的な業務フローをマニュアル化し運用を決める事が最初の難関
当社は大阪府・滋賀県を中心に人材派遣、人材紹介を行なっています。当社としては、他社との違い独自の付加価値をつけたい考えていた頃、優良派遣事業者認定制度ができたことを知り、「この認定を取得すれば、地域の中で選ばれる会社として他社との差別化を図れるのではないか」と考え取得を目指すことになりました。
優良派遣事業者認定では 81 の審査項目がありますが、おそらく多くの派遣会社が通常業務内で対応できているはずです。当社においてもそうでした。しかし、その頃の当社は属人的な業務フローが多く、対応はしていもエビデンスが残っていない、マニュアル化されていない…といった状況でした。そこで属人化していたノウハウをマニュアルにするところから始めましたが、あっという間にマニュアルが増えていきました。
数多くのマニュアルを社員全員が理解しやすく管理するには、社内でどのように運用・アップデートしていくべきかを決めるのが最も大変でした。
実は初回の審査では 3 つの審査項目を満たすこ とができず、一度審査に落ちてしまいました。原因の一つは、個人情報保護関係について準備不 足などがあったためです。次年度に、再度審査 項目一つ一つを全て見直して、改めて審査に臨み、認定を取得することができました。
認定更新の活動を社員教育と捉え組織の垣根を超えたチームを組成
認定更新の際は、まずは管理部門、営業部門、採用部門それぞれの課長を集めてプロジェクト を組み、そこへ実務者となるメンバーを加えて、限られた一部門だけで対応することがないように組織の垣根を超えた体制を作りました。このプロジェクトを社員教育の一環と考え、認定制度の仕組みを浸透させるため、ノウハウや知見をもつ初回認定時のメンバーに加えて、営業や採用部門からも新たなメンバーが参加しました。全員でスケジュールや全体の概要を把握した後は、審査項目の一つひとつについて、認定で求められる基準に達しているかを各部門に分かれて確認、対応していきました。
オンライン審査はスムーズな進行に加え審査自体に集中できるメリットも
コロナ禍になり、オンライン審査か訪問審査かを選択できるようになりました。対面でしっかりと説明したいと考えていたのですが、審査のタイミングに変更があったこと、厚生労働省がオンライン審査を推奨していたこと、審査機関がオンラインを希望されたこともあり、最終的にオンライン審査を選択しました。
オンライン審査に向けて準備段階ではすべての資料をデータ化する必要があります。一枚ごとにファイルを作成すると、ファイルを開く動作に時間がかかってしまうため、項目ごとに資料をまとめて PDF 化するなど工夫をしました。そのため事前準備は大変でしたが、審査当日は紙をめくる必要も無く、データでスムーズにやり取りできたことで時間が短縮され、想定よりもスムーズに進みました。
認定をブランディングに活用することで社外からの信頼に大きく寄与
当社は南大阪で唯一の認定事業者なので、取得後はブランディングの一環として、認定マークを駅の看板に掲載したり、電車のアナウンスに活用したりしています。「優良派遣事業者認定は大手の派遣会社でなければ取得できない」と思っていらした派遣先企業からは、中小企業である当社が当認定を受けていることに関心の声をいただきました。
最近では、行政の案件で優良派遣事業者認定取得が入札の条件になっていることも増えていますし、転職関連 Web サイトの口コミでは、認定を受けている数少ない会社であることを評価した派遣スタッフからのコメントも寄せられており、法人・個人ともに良い企業イメージに繋がっていると思います。
社内の仕組み化が進み組織としてのまとまりが生まれた
優良派遣事業者認定を受ける前の当社は、社長が示す道をただまっすぐ進むだけで組織的に会社を動かしていく仕組みがなく、社員個人の能力へ依存が高い状態にありました。しかし、社員数も増え、変化の速い時代に対応していく動きが必要とされる中で、認定に挑戦することが良いきっかけとなって組織化が進んでいきました。
今では、優良派遣事業者認定を取得している会社の一員であるという意識が、社員一人ひとりに根付いてきていると強く実感しています。以前は社員それぞれが個人で活動する仕事の進め方が社内でも多く見られましたが、認定を受けるにあたって組織の垣根を超えて皆で協力できたことで、組織がまとまっていったと思います。
派遣スタッフのキャリア形成を導き選ばれる派遣会社であるために
派遣業界は偏った形でメディアに取り上げられることも多く、まだまだ誤った先入観や偏見があると思いますが、2015 年の派遣法改正から 2020 年の同一労働同一賃金を経て、派遣スタッフのキャリア形成の道が完成に近いところまで来ていると思います。
この道を正しく、より良くしていくには厚生労働省が提言する魅力的な職場作りや生産性の向上が必要ですが、これらも優良派遣事業者認定制度の中に網羅されています。
また、この制度にはコンプラアンスの遵守、派遣スタッフのキャリア形成のきちんとした枠組みがあり、その認定を取っていることは会社が健全であるという自信や誇りとなるため、非常に意義があると感じています。
労働人口が減っていく中、人材業界で勝ち残っていくには、派遣の仕組みを体系化し、派遣スタッフの地位向上と業界の健全化に寄与することが必要です。その志をもつ企業が認定を取得すれば、制度を通じて会社としての姿勢を示すことができ、会社の強みになっていくはずです。我々は派遣スタッフファーストで、働く個人に寄り添い後押ししていくことで、選ばれる派遣会社を目指していきます。